陶芸好きの友人たちと話していて、陶芸ファンや陶芸を生業としている方たちは、一体どんなマグカップを使っているのだろう?という話題になった。きっと毎日のように使うマグカップには、使う人の個性や生活、ひいては陶芸への熱い想いが込められているに違いない!との結論を得て、唐突に企画連載を始めてみたいと思います。

題して「拝見!となりのマグカップ」。

ヨネスケ師匠、陶芸を親しみやすく世界中に伝えていくためにどうかそのシステムをしばし私どもにお貸しください。記念すべき第1回は、元美術館展示解説員、現在はビューティーセラピストとして活躍する若き女性社長 Yさんに突撃!突然の申し出にも、さほど驚いたご様子もなく、にこやかに対応してくださった。この落ち着いたご対応…かなりの手練れではなかろうか?

きっと数あるカップの中から、すごいのを選んでくるに違いない…。

どきどきしながら、待つこと数分…ハーブティーの良い香りが立ち上り、「はい、どうぞ」と素敵な笑顔とともに差し出されたカップにはお茶が入っている!感激!
これでは、となりのティータイムではないか、と恐縮しつつ、まずは、彼女のおもてなしの心に感謝。せっかくなので、遠慮なく頂戴いたします!

いい香り…

カモミールティーで緊張もほぐれたところで、いざ拝見!

して、今日のお作は…

 

増田光さんの作品です。
増田さんは、愛知県常滑市を中心に、東京の百貨店などでも展示会を行う、若き女性陶芸家です。
「増田さんの作品はどれをみても、いつみても つい笑顔になっちゃうんですよね~。ホント好きです。これは今年陶器市に出かけた際、彼女のブースに並んでいたものを一目見て気に入ってしまって、即購入しました。」とのこと。
写真では分かりにくいかもしれないが、取っ手が手になっている!

取っ手の手らしさが、写真でうまく表現できず、撮ること数枚…

器の部位を説明するのに、口、肩、手、胴、腰…と人体のパーツになぞらえた表現をするが、これは、まさしく、腰!
実際に取っ手を握ってみると、母親が幼子の手を引くような何ともやさしき感触…。
この感触は、パンチ力絶大だ。

海馬の奥に染み入るような、とでも言えばよいだろうか。遠い昔の優しい思い出を呼び起こすためのスイッチになり得そうな、鮮烈な感触。

「遊び心満載の豊かなイメージを陶芸として表現しているところがとっても魅力的。この感触がたまらないんですよねー。」とY社長。

 

確かに、これは癖になる使用感。
陶芸作品だからこそ、目で見て、手で触れて、五感で味わうことができるし、さらに食器だと、味・香りの記憶や料理・飲物の色合いなどが加味された豊かで心地よい刺激を受け取ることができる。作品から良い刺激を受けた時、その時の空間、時間までもが、深く記憶され、こういう積み重ねが言わば人生の糧となっていくのではなかろうか。今日の取材は、おいしいお茶を頂いたとき、誰かに優しく手を引かれたとき、ユニークな食器に出会ったとき、確実に思い出すであろう、素敵な時間となりました。

ご縁に深く感謝。

Y社長、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

…と思ったところで、色が映えるから、と今度はこのマグカップに青ほうじ茶(※注)を淹れてくださったY社長。またもや、しっかりと頂戴しつつも、やっぱり、となりのティータイムではないか、と小さくつぶやいたのでした。

ではまた次回!お楽しみに。

(※注)青ほうじ茶…弱火でじっくりと焙る製法で作ったほうじ茶。茶葉の緑色を残しつつも、深みや香ばしい風味が楽しめる。

 

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